元ギタリストがGLAY「虹のポケット」について語る

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以前DIAMOND SKINについて書いたエントリーが好評をいただき、「虹のポケットについても書いてよ」と某PR系の会社に依頼されて書いた記事です。ブログにあげてもよいという許可を頂いたので、こちらにも掲載します。

この曲には、個人的に歌詞に強い思い入れがあります。歌詞については記事の後半で熱く語らせていただくとして、まずは曲のパートごとに元ギタリスト目線で聴きドコロを紹介させていただきます。これを知れば『虹のポケット』を1024倍楽しめるというつもりで、書いてみました。

と思ったのですが、虹のポケットはPVがインターネットに上がっていないので、YouTubeなどを紹介することができないですね。悔しい。

虹のポケット GLAY

是非曲を聴きながら読んでみてください。

イントロ

中央から聞こえてくるアコースティックギターのかき鳴らしと右チャンネルのTAKURO、「1ストロークに魂を込めたようなギターが印象的なイントロ。
注意深く聴くとドラムがかなり特徴的です。イントロ後半部分からスネアを入れてきます。そして入れ方も絶妙で、一般的には
ズンタンズズタンと、タンのところで入れるのですが、
ズンズンズンタン1小説の最後だけにスネアが入っています。
これはアコースティックギターの煌びやかさを際立たせるために、ドラムは低音に徹しているのではないかと思います。

1Aメロ

1週目

最近のGLAYの曲でよく思うのですが、AメロはとてもTERUの歌の味を感じることができると思いませんか?
「光と影」の「かぁげの」という母音の絶妙な表現や、「光と影の隙間に」と「落とした夢は」の間のブレスの音にうっとりします。DIAMOND SKINAメロで感じたのはTERUの色っぽさですが、虹のポケットAメロで感じたのはTERUの優しさです。歌い方と、歌から想像できるTERUの表情から、そう感じます。

そしてこの部分、ドラムはバスドラムを打っているだけで、クリーントーンのギターが控えめに鳴っている伴奏だからこそ、歌の繊細なニュアンスが伝わってきます。

2週目

左チャンネルからHISASHIイントロと同じフレーズが聴こえてきます。この揺れるような音はトレモロというエフェクター(音に効果を加える装置)を利用していると思われますが、このふわふわした感じから急に「音だけはいつも」の部分で実にHISASHIらしい荒々しいフレーズに切り替わります。この部分のTERUの歌にHISASHIのギターが合いの手をいれているような構成に思わずにやりとしてしまいます。

1Bメロ

これはもう、Bメロの鏡といえるかもしれません。
この曲でBメロが担っている役割は、Aメロのしっとりした流れを受けつつも発展させた、サビに向けての助走でしょう。
そしてこの部分のHISASHIのギターがホントに可愛らしい!

「あたり前のことに 日々怒り悩んでいた」の部分ですが、TERUのリズミカルな歌を追いかけるようなフレーズが左チャンネルから聴こえてきませんか?私は、野ばらで蝶々をつかまえようと走ってる健気な女の子が目に浮かんできました。となりのトトロのメイちゃんみたいな女の子です。
「あれ、歌詞とアンマッチだ」と一瞬思ったのですが新たな解釈が生まれました。あたり前の事に日々怒って悩んでる私たち大人が、無垢で純粋な子どもを見たときに「なんてちっぽけなことで悩んでいたのだろう」と感じることがあります。私にはそんな気づきを与えてくれました。

TAKUROさん、考えすぎですかね?でも音楽にはこれくらい自由な解釈があったほうが良いと思っています。

ドラムは、シンバルが鳴り始めて盛り上がりつつ、「今喉の奥でうずく」のあたりは、はやる気持ちを抑えさせまあそう焦るなよと言われているようです。

そして「このメロディ」から加速して、いよいよサビです!

1番 サビ

「心地よい風の中」
この歌詞とアコースティックギターの爽やかさがなんとも言えず叙景的です。『Route 5 Bayshore Line』の様に、青い空にまっすぐ突き刺さるようなサビですね。
そしてサビの中での抑揚がこれまた気持ちが良いです。「たまにつまづき」で急にそれまでの盛り上がりを一旦落ち着けますが、すぐさま「さぁ起き上がれ」の部分でグイッと持ち上げます。特に「起き上がれ」の「」の発生の力強さと艶っぽさに、ボディブロウの様な衝撃を受けます。

たまにクラっと意識失いそうになります()

これは他のサビでも同じですが、個別のプレイを聴いてみると次のような味わいどころがあります。

「たまにつまずき転んだなら」や「どんな道を進めばいい?」の部分でTAKUROがスネアにあわせて弾いているキレの良いギター。(そこの透明な音はどのギターを使っているのか、元ギター少年としてかなり気になります)
JIRO
のベースが「心地よい風~」の盛り上がる部分ではルートを弾き、「たまにつまづき」で急にアップダウンの激しいフレーズを弾いてます。これによって、上述した通り盛り上がりが落ち着く部分でノリが失われず、なんだか自然と体が動いてしまうグルーブ感が出ています。

2Aメロ

HISASHIが不思議なフレーズを弾いていますね。『Yes,Summerdays』のAメロのように、歌とは独立してTERUの後ろでHISASHIが歌っているようなフレーズです。1番ではTERUを引き立てるようなギターでしたが2番ではTERUをある意味無視したようなギターといえるでしょう。

2Bメロ

歌のメロディ-は1番と変わりませんが、印象は随分違いますね。1番と違ってAメロで既に勢いがあるので、上げていくというよりは勢いそのままに展開していく感じでしょう。ドラムはシンバルではなくドコドコといったタムが目立っていHISASHIの可愛いフレーズはありません。

なんといってもBメロからサビへ向かう部分のギターがヤバイです。

「子供らの様に」のあたりから左と右の両方から聴こえてくるロックっぽいギターですが、特に最後の

「ジャっジャー!!」

これ!!!

思わず頭や手でリズムをとってしまうほど印象的です。

2番 サビ

このサビはヨコハマタイヤのCMで使用されていたため、耳に残っている方も多いのではないでしょうか。1日で300回くらい(それは言いすぎか)聴いて感じたのですが1番のサビと比較して2番のサビではアコースティックギターの音が控えめになっているように聴こえました。

始めは「歌詞が『心地よい風』だとアコギの印象が強く聴こえてくるのかな」と思っていたのですが、印象を変えるために意図的に変化を付けているのかもしれません。

ギターソロ~ラスサビ前のBメロ

ほぼ同じフレーズを4回繰り返すようなソロですが、注意して聴いてみて下さい。3回目までは全く同じなのに4回目だけ、頭の音が違います。これはピッキングハーモニクスというHISASHIお得意のギター奏法です。多分日本で一番ピッキングハーモニクスを効果的に使えるのはHISASHIではないかと個人的には思っています。他にもMERMAIDのイントロの頭の音や、誘惑のギターソロなど様々な場面でHISASHI叫びのようなピッキングハーモニクスを体感できます。

そしてこのBメロではTAKUROのギターがなんとも気持ちが良いです。右チャンネルから聴こえてくるクリーントーンの綺麗なギターですが、「いつも感謝していたい」の部分で「えっもういなくなっちゃうの?」という感じでちょっと早めにジャランと終わります。このタイミングがなんとも絶妙なのです。ドコドッドッドとドラムが入ってTERUの歌につなげるこの流れがとても好きです。

このTERUの歌グっときますね。「しーあわせー」のなんとも言えない声に、男の私も胸キュンしました。

ラスサビ

3つ、悶絶ポイントがあります。

[1]「広げた両手 翼に見立て」の「翼」

[2]「新しい僕の夢」の音程変化

[3]「目の前の荒野に映し出せ」の全て()

おそらくこの記事を読まれながら曲を聴いている人は、既にこの3つの悶絶ポイントにグサグサやられて悶えていることと思いますから多くは語りません()

それにしても最後の「映し出せ」のTERUの声のノビ、なんと気持ちの良いことでしょうか。早く野外でこの曲を聴きたいものですね!

そして最後に「大切なことなので2回いいました」と言わんばかりに繰り返される

「退屈と無縁な明日に乾杯さ」という歌詞

全く同じ言葉を繰り返しているところに、TAKUROGLAYからのメッセージの強さを感じます。

歌詞について

この曲の歌詞は、2011年の震災以降GLAYが発信し続けてきたメッセージが強く表われているなと感じました。震災以来GLAYは『生きてく強さ』を歌い続け、「この日本で生きていこう」とメッセージを投げ続けています。今回の『虹のポケット』では「今自分がいるここで、夢を見て生きていこう!」と言っているように私は受け取りました。

1番では「あたり前の事に 日々怒り悩んでいた」と歌っていますが、ギターソロの後では「あたり前じゃなくて いつも感謝していたい」と歌っています。

これは捉え方の違いであると思います。毎日私たちの周りでは様々なことが起きます。例えば決して楽じゃない暮らしの終わりに、「今日も辛いことばかりだった。仕事ではミスをしてしまったし、なんであんな下らないことで彼氏とケンカをしてしまっただろう」と悩むのではなく、「仕事でミスをしたけど、周りのみんなが助けてくれた。仲間にホント恵まれてると実感したなあ」と前向きに捉えてみたらどうでしょうか。

私はかつてバンドマンでした。非常に辛かった時期にメンバーから「朝に太陽を見て、それに喜びを感じることができるようになれば良いんだよ」と言われてから考えが変わりました。あたり前じゃなくて感謝を感じられるようになると、悩むよりも喜ぶことが多くなるので前向きな気持ちになれます。

じゃあ辛いことがないかというと、「どんな困難な道でもいい 退屈と無縁な明日に乾杯さ」という歌詞にヒントがあります。

アルバム『GUILTY』の特典DVDTAKURO「二時間ドラマでずっとハッピーだったら嫌だもんね。もがいている自分が理想の自分」と言っています。

辛いことはあるかもしれませんが、2時間ドラマの間のCMのような退屈なことは日常の生活にはありません。すべてが自分の人生を彩る出来事となります。辛いことも楽しいこともひっくるめて自分の人生として楽しめば良いじゃないかと私は感じました。

そう考えると1番のサビで歌われている「虹色の地図」の正体が見えてきます。

虹色の地図と聞くとあたかも「楽しいことに満ち溢れた、ありがたい世界に導いてくれる地図」というような印象を受けます。でもそうじゃない。今私たちが住んでいるこの世界の地図が既に虹色の地図であると感じました。7色どころではない無限の可能性があって、無限と言って良いほど多様な人がいて、既にこの世界は虹色なんだ荒野に見えるかもしれないけれど、そこに夢を映し出して走ろう!

そんな強く前向きなメッセージを私は感じました。皆さんはいかがでしょうか?

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『元ギタリストがGLAY「虹のポケット」について語る』へのコメント

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