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GLAYの歌詞にあって、ふだんの会話には無い言葉。日常会話200時間と比べてみた

GLAYの歌詞にはよく出てくるのに、ふだんの会話では使わない言葉。気になったことはありませんか。

「どうしてこの言葉は、GLAYっぽく聞こえるんだろう?」

日常会話や書き言葉と、どこがどう違うのか。気になって調べてみたところ、興味深い発見がいくつもありました。

ふだんの会話でよく言う食べる・先生・美味しいはGLAYの歌詞に入らず、会話では少ない悲しみ・瞳・闇・温もりが歌詞に残る
この記事で分かること
会話ではよく言うのに、GLAYではほとんど出ない言葉食べる、先生、美味しい。出てくるのは1〜2曲だけ。
会話ではめったに言わないのに、GLAYではよく出る言葉悲しみ、瞳、闇、温もりなど37語。
会話は「好き」、GLAYは「愛」会話で気持ちを言う言葉は96%が好き。GLAYの歌詞は58%が愛。

ただ、これは簡単ではありませんでした。GLAYっぽさは感覚の話で、数字にはならないと思っていたからです。転機は、好きでよく見ているYouTubeのゆる言語学ラジオでした。日本語の使われ方を大量に集めたデータ、コーパスというものがあると知り、前回数えたGLAYの歌詞と突き合わせれば見えるのではないかと考えたのが、今回の分析です。どう調べたかを示さないと意味のない話なので、方法から書きます。細かい部分は読み飛ばしてもらって構いません。

第1章:まず物差しをそろえる。ふだんの日本語と、どう比べたか

ふだんの日本語の物差しは、二つ用意しました。

  • 書き言葉:本、雑誌、新聞、ブログなどの文章を約1億語集めたデータ(『現代日本語書き言葉均衡コーパス』)。
  • 日常会話:家庭や職場でのふだんの会話を200時間録音して、文字に起こしたデータ(『日本語日常会話コーパス』)。約240万語。

どちらも、どの言葉が何回出てきたかの一覧が、国立国語研究所のサイトでインターネットに公開されています(書き言葉の語彙表日常会話の語彙表)。これをGLAYの歌詞(前回と同じ、2024年10月までのデータ)と並べます。

比べ方はシンプルです。ある言葉がふだんの日本語と同じ割合ならGLAYの何曲に入るはずかを出し、実際の曲数がその何倍かを "倍率" と呼びます。倍率が大きいほど、GLAYの歌詞に偏って出る言葉です。

数えるのは前回と同じで、その言葉が入っている曲の数だけ。1曲の中で何回出てきても1曲です。

難しいことは置いておいて、実際のデータを見たほうが早いと思います。基準はどちらの表も書き言葉です。まず、ふだんの日本語ではよく出るのに、歌詞にはほとんど出ない言葉。

言葉書き言葉100万語に同じ割合なら実際倍率
食べる796回約20曲1曲0.05倍
美味しい295回約8曲2曲0.26倍
先生656回約17曲1曲0.06倍

逆に、ふだんの日本語では珍しいのに、GLAYの歌詞には出てくる言葉。

言葉書き言葉100万語に同じ割合なら実際倍率
高鳴り0.61回約0.02曲4曲246倍
生き急ぐ0.63回約0.02曲4曲237倍
滔々2回約0.04曲1曲23倍
履き古し0.02回約0.001曲1曲1,000倍

食べるは、同じ割合なら約20曲に入るはずが、実際は1曲。履き古しは、同じ割合なら全曲を合わせても0.001曲分にもならないのに、1曲にあります。一般の日本語での使われ方との、この乖離を、倍率という形で表しています。

ここでクイズです。食べるが出てくるたった1曲は、どれでしょう。

  • FRIEDCHICKEN & BEER(1998)
  • ストロベリーシェイク(1998)
  • mister popcorn(2001)
  • FRIED GREEN TOMATOES(2021)

正解は……この中にありません。道産子シーサー(2003)の「食べるソーキ味噌ラーメン」でした。フライドチキンもビールもポップコーンもトマトも題名になっているのに、歌詞の中で食べているのはソーキ味噌ラーメンだけです。FRIED GREEN TOMATOESには「僕は喰らう」があるので、トマトはたぶん喰らっています。

第2章:会話ではめったに言わないのに、GLAYではよく出る言葉

まず全体図です。点はGLAYの歌詞に出る言葉で、横は日常会話200時間での出現回数、縦はGLAYの何曲に出るかです。会話の一覧に見当たらない言葉は左端にまとめています。

日常会話での出やすさと、GLAYで出てくる曲数横:日常会話200時間で何回出てくるか(対数)。縦:GLAYの何曲に出てくるか。1点が1語。名前は重ならない範囲で入れた会話に見当たらない1回10回100回1000回1万回0曲30曲60曲90曲120曲150曲180曲↑ 上ほど、GLAYの多くの曲に出てくる← 左ほど、会話ではあまり出てこない右ほど、会話でよく出てくる →日々悲しみ抱きしめる切ない傷つける孤独温もり降り注ぐ美味しい食べる先生このそのあのもう生きる言うままもの言葉全て明日優しい知る独りどう世界思うまたそう未来そんな幸せ愛しい泣くわかるまだきっと今日想い出照らす場所消える想い眠る笑顔駆ける彷徨うずっと無邪気出逢う人生遠い奪う許すみんな見上げる輝く別れ儚い出る本当違う悪いこう不意赤い選ぶ始まりGLAYLIFE.com
横:日常会話200時間で何回出てくるか。縦:GLAYの何曲に出てくるか。点に触れると、その言葉の曲数と倍率が出ます

右下の食べる、美味しい、先生は、会話ではよく使うのに歌詞にはほとんど出ない言葉です。

横軸を書き言葉にした図も置きます。会話と書き言葉で位置が動く語があります。

書き言葉での出やすさと、GLAYで出てくる曲数横:書き言葉で100万語に何回出てくるか(対数)。縦:GLAYの何曲に出てくるか。1点が1語。名前は重ならない範囲で入れた0.1回1回10回100回1000回1万回0曲30曲60曲90曲120曲150曲180曲↑ 上ほど、GLAYの多くの曲に出てくる← 左ほど、書き言葉では珍しい右ほど、書き言葉でよく使う →日々悲しみ抱きしめる切ない愛しいさよなら孤独儚い温もり鼓動トキメキ降り注ぐ分け合う美味しい食べる先生このそのあのもう生きる言うままもの言葉全て明日優しい知る独りどう思うまたそう幸せわかるきっと今日自分逢う意味聞く持つこう赤い選ぶ仕事GLAYLIFE.com
横:書き言葉で100万語に何回出てくるか。縦:GLAYの何曲に出てくるか。点に触れると、その言葉の曲数と倍率が出ます

会話では少ないのにGLAYで多い語に絞ると、会話200時間で3回以下かつGLAYで10曲以上の語は37語ありました。

会話ではほとんど見当たらないのに、GLAYではよく出る言葉
日常会話200時間で3回以下の言葉のうち、GLAYの10曲以上に出てくるもの

たとえば悲しみ51曲、瞳47曲、闇39曲は、会話では1〜2回です。愛しい26曲、温もり21曲、照らす20曲、頬18曲、ため息16曲は会話の一覧に見当たりません(頬は、ほっぺ、ほっぺたの形なら少しあります)。

今夜、不意、告げる、訪れると、読みや表記で数がずれる口唇、描くは外しています。

温もりと愛しいは、デビュー期から最近まで見られます。

  • ツメの先から君の温もりが消えるFreeze My Love1995
  • あなたの温もり求めない日はないALL STANDARD IS YOU2001
  • 愛しさの意味を知るHOWEVER1997
  • 誰も独りでは生きられぬ弱さが愛しくてBE WITH YOU1998
  • 時は過ぎゆく…その速さ この頃愛しくてBible2012

会話では少ない言葉が、GLAYでは多くの曲に出ます。歌詞が、ふだん口にしにくい言葉の置き場になっているようです。

第3章:倍率がとくに大きい言葉は、動詞を重ねている

次は倍率そのものが大きい語です。3曲以上に出る語から、書き言葉比の倍率上位8語を見ます。

ふだんの日本語より、GLAYの歌詞に偏って出る言葉
3曲以上に出てくる言葉のうち、書き言葉と比べた倍率が高い8語

1位は高鳴りで246倍です。ふだんの日本語の割合ではほぼ出ない語が、4曲に見られます。

上位語には、動詞を重ねた形が目立ちます。生き急ぐ、去り行く、泣き濡れる、変わりゆく、許し合えるで、8語中5語です。ひとつの動きに、もうひとつの動きを重ねる。この選び方は、GLAYの歌詞の癖のひとつだと思います。

  • 臆病な胸の高鳴りを伝えられずBE WITH YOU1998
  • 生き急ぐ事で、分かり合える軌跡の果て1996
  • 去り行くあなたでしたWay of Difference2002
  • 泣き濡れた夜もあったなpure soul1998
  • 変わりゆく他人(ひと)を遠くに見てはここではない、どこかへ1999
  • 互いに心許し合えたHAPPINESS1999

第4章:1曲にしか出てこない、珍しい言葉

1曲か2曲だけの語は、日本語全体での珍しさが倍率に強く出ます。ここでは順位を付けず、印象的だった語を並べます。

滔々とうとう。水が勢いよく流れるさま。よどみなく続くさま
そっと滔々と白い雪はWinter,again1999
文語の表現。文学や演説の描写でしか出てこない
履き古しはきふるし。長く履いて古くなった靴や衣類
履き古しの靴 どこまで飛べるかここではない、どこかへ1999
会話なら「古い靴」で済む。わざわざこの形で言わない
徒花あだばな。咲いても実を結ばない花。実りのないもののたとえ
歴史の徒花真夏の扉1994
古い比喩。会話では「実らなかった」「無駄になった」と言う
うすのろ動作や頭の働きがにぶいこと。また、その人
君の大事な夢ってやつはうすのろかもねHAPPY SWING1995
人をけなす古い言い方で、今はあまり使わない
客電きゃくでん。劇場やライブ会場の客席側の照明。開演で落ちる
客電が落ちた17ans2003
舞台や興行の現場の言葉。客席にいる側は使わない
撃鉄げきてつ。銃の部品で、引き金を引くと雷管を打って弾を発射させる部分
涙に濡れたこの撃鉄を会心ノ一撃2024
銃を扱う場面が日常にない

滔々、履き古しは第1章のとおりで、客電も書き言葉では多くありません。こうした語がシングル曲に置かれているのも、GLAYの歌詞の魅力です。

第5章:脱線。会話では好きと言い、GLAYは愛と歌う

日常会話側も見ます。200時間で多い動詞は、言う28,447回、思う9,740回、分かる6,041回、食べる3,831回。雑談そのものです。

気持ちの語はどうか。好きは1,242回、大好きも171回あります。いっぽう愛は、愛する、愛情を足しても39回、恋は20回。会話では好きが中心です。

好き、愛、恋の3語の割合を、日常会話、書き言葉、GLAYの歌詞で並べたのが次の図です。

会話では好き、GLAYの歌詞では愛
青が好き、赤が愛、黄が恋。左が日常会話、真ん中が書き言葉、右がGLAYの歌詞

左から右へ、青の好きが減って赤の愛が増えます。会話では気持ちを言うときの96%が好きで、愛はほとんど出てきません。書き言葉では愛が3分の1、GLAYの歌詞では愛が半分を超え、好きは1割です。ふだん好きと言っているところを、GLAYは愛と歌っている

GLAYで好きのある曲は26曲。そのうち10曲は「好きだった」と過去形で、終わったあとから振り返る場面に出てきます。

  • 「ずっと好きだった」HELLO MY LIFE1999
  • 見守る君をずっと好きだったとまどい2000
  • 2人はこの場所がとても好きだったからつづれ織り2005
  • 「今でも好き?」と問われても青春は残酷だ2021

愛のある曲は168曲。出方を挙げます。

  • 静かな愛の中 心からそう思うよずっと2人で…1995
  • 泡沫(うたかた)の恋を愛だと呼んだBELOVED1996
  • 絶え間なく注ぐ愛の名を 永遠と呼ぶ事ができたならHOWEVER1997
  • 愛は愛のままじゃいられず いつか形を変えるpure soul1998

会話で好きと言うところを、GLAYは愛と書く。BELOVEDの「恋を愛だと呼んだ」は、その言い換えをそのまま歌っています。会話と歌詞とで、気持ちを載せる言葉が入れ替わっている。第5章でいちばん見てほしいのはここです。

会話の一覧には回数しか無く、前後の文脈は入っていません。会話の好きが人に向けたものか、食べ物や趣味の話かは、この数字からは分かりません。

第6章:この比べ方で言えないこと

この比べ方の注意点です。

  • 比べた相手は本や会話で、ほかのアーティストの歌詞ではありません。ここで見えた傾向は、GLAY固有ではなく歌詞全体の特徴の可能性があります。
  • 書き言葉は主に1976〜2005年、日常会話は2016〜2020年で、GLAYの歌詞と時期がずれています。
  • 見る、行く、来るのように補助的な語と同じ分類になる語と、英語の語は数えていません。

おわりに

温もり、愛しい、儚いは、会話より歌詞で目立つ語でした。歌詞は、日常では出にくい言葉を置ける場なのだと感じます。

今回使ったコーパスは、国立国語研究所が誰でも使える形で公開しているものです。少しでも興味が湧いたら、ぜひ触ってみてください。少納言というサイトで、書き言葉1億語の中から言葉を検索できます(登録不要、無料)。コーパスとは何かは、ゆる言語学ラジオのコーパス回が入口としていちばん分かりやすいと思います。書き言葉コーパスの設計に携わった丸山岳彦先生が出演しています。

この言葉も日常では使わないよね、この珍しい言葉はあの曲にもある、といった気づきがあれば、ぜひXで教えてください。

比べる相手にしたふだんの日本語のデータは、国立国語研究所の『現代日本語書き言葉均衡コーパス』短単位語彙表と、『日本語日常会話コーパス』短単位語彙表です。 どちらも国立国語研究所が研究・教育目的で公開している語彙表(頻度リスト)で、本記事はその集計値だけを使い、コーパスの本文は掲載していません。参照文献:小磯花絵ほか(2022)「『日本語日常会話コーパス』の設計と特徴」言語処理学会第28回年次大会発表論文集/Maekawa, K. et al. (2014). Balanced corpus of contemporary written Japanese. Language Resources and Evaluation, 48(2).